大阪北新地の個人割烹店に2年、赤坂の料亭を4年で退職し独立。
都内を中心に、出張調理や、料理教室をして、フリーの板前として活動している「ぼり」です。
ぼくは自身の板前修業体験をもとに「板前の古い価値観や風習はさっさと変わっていかなければならない」ということをずっとこのブログに書き続けてきました。
ですが、それは「板前の世界観が全部ひっくり返ればいい」という意味ではありません。
板前修業は単純な表現で言えば厳しいです。
ただ、そこに乗じて理不尽な雇用体系や人間関係が生まれていることに対してぼくは声を上げています。
そして、この記事に書くのは修業をする際に必要な目的意識の持ち方についてのお話です。
板前の世界が厳しいのは仕方がない、むしろ必須。
料亭時代、後輩から「板前の世界は厳しすぎてつらい」というような相談をもらったことがあるのですが、その後もその後輩に甘く接することはありませんでした。
板前の世界は厳しいです。ふつうに引っ叩かれたりします。
怒鳴られるし、ときには仕事を取り上げられたりもします。
そしてぼくも正直言って後輩にはそれなりに厳しく接してきました。
あまりにもひどい時は手が出たこともあります。事実です。
それはなぜか。
人の食べるものを作っているからです。
そして、お客さんは待ってくれない。
と、まあいろいろな理由がありますが、総じて「ユルさ」はいらない仕事だからです。
ただ、ぼくが板前修行を続けられたのは「たまたま」でしかなかった
ぼくは板前修業中は、納得できない理不尽なことには全力で歯向かってたので、先輩とでも割とモメることが多かったです。
毎回ぶつかってたらいい加減(?)あきれられるのか諦められたのか、何も言われなくなったので、なんとか修行を続けてこられました。
でも、ぼくみたいにいちいち反撃する人ばかりじゃない(というかほとんどの人はこんな生き残り方選ばない)ので、ムダにストレスを溜めるか、イヤになってやめていく。
でも、ぼくは料理が好きでこの世界に飛び込んだ人が、先輩からのイジメみたいな「くだらないこと」で諦めていくのは本当にイヤです。
ぼく自身、気に入らないというだけで後輩を潰しにかかってくるような職場に当たっていたらやめていたかもしれない。
(実際に存在します。そんなお店に当たったらさっさとやめましょう)
それはまちがっていると思うし、そんな場面を目撃したときはしっかりと目の前にいるひとには、ぼくが助けられる程度のことなら手を差し出します。
でも、「厳しい」からイヤだって言うならそこで辞めることも視野に入れてお話させてもらってます。
好きならやればいいと思う。でも、やるならちゃんとやる。
ただ単純に厳しいのがキライなんて程度の気持ちの人はきっぱりとやめておけばいいと思う。
でも、料理がヘタなら上手になればいい。
衛生面の知識や板前としての技術が足りないのなら時間をかけて修行すればいい。
そこに向かう姿勢はすぐにでも変えられるし、整えなきゃいけない。
だから、今働いている環境で毎日文句を言いながら修業するのは本当に無駄なので、無駄に経験年数を重ねるくらいなら職場を変えるか、板前修業そのものを続けるかどうか見直すべきだと思っています。
やる気のない人間が現場にいるのは、周りのメンバーにとっても正直邪魔でしかないので。
これから挑戦する全ての料理人へ
料理好きなひとが料理を仕事にするために修行をするのはすごく応援したいけど、間違いなく厳しい世界です。
厳しさ自体に耐えられないというのであれば正直難しいと思う。
ただ、自分のなりたい姿に近づくには、やっぱり修業をする環境をしっかりと選ぶ必要がある。
もし、理不尽に古い価値観に縛られて、「料理は好きだけど、人間関係のせいで料理が楽しめなくなっている」という方は、さっさとその職場を離れたらいいと思う。
その我慢の先には何もありません。
ぼくたちはあくまで「板前修業」をしているのであって、パワハラの我慢は修行ではありません。
固定概念に囲まれた世界にいると見失いがちになってしまいますが、一歩外に出れば全く景色は違います。
相手の意見も汲み取りつつ、よりよくなるように提案をしてくれるのはいい指導者です。
しかし、思考することを断ち、自分の言っていることにハメてしまおうというのはただの悪い宗教です。
いつでも逃げられるようにしておいてください。
こうしてキャリアアドバイザーを挟んでお店の状況を聞く事や労働条件を調べる事が今まで本当にできなかったからこそ、これからチャレンジをする人にはせめて「修業先を選ぶ」権利を持ってほしい。
料理を好きな人が「修業」に挫折してその業界自体に失望してしまうのは本当にもったいないと思うから。
夢を持って専門職にチャレンジするのは本当に素敵な事だと思っています。
だからこそ一歩踏み出すのであれば自分の趣向に合った「働き方」を探す事からしっかりと考えてみてほしい。
ぼりでした。