ぼりの板前時代

雰囲気が生み出す「美味しい」はニセモノをホンモノに変える

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こんにちは、板前の「ぼり」です。

ぼくは以前先輩から「味で半分、器と盛り付け、あとウンチクで半分」との言葉を昔教わったのですが、この言葉をしみじみと感じた出来事があったので、振り返ります。

お客さんの勘違いからはじまった「小さな嘘」

 大阪の個人の割烹料理店で修行していたときの話。

夜は1万円からと、割とお高めな価格設定のお店だったのですがお昼には日替わり定食を毎日950円で提供していました。

昼と夜でお客さんの層が違っていたのですが、珍しく夜の常連さんがお昼に「近くに寄ったから」とランチを食べに来てくれたのです。

その日のランチはポン酢で食べるカレイの唐揚げ定食。

そのお客様は「やっぱりこのお店はおいしい!」といって召し上がってくださって、「家庭ではこんな味が出せないからね!ポン酢ひとつとっても味が深いよ。」と。

こーゆー事はホントは書いちゃいけないのかもしれませんが、ランチを950円の原価で抑えるには自家製のポン酢を作るにはあまりにもコストがかかりすぎます。

また夜の1品料理に比べて定食にはポン酢を使う量も多い。

他のお店でも昼用と夜用で使い分けをしているお店も多くあると思います。

ぼくのお店も夜は1週間以上鰹節や昆布などを漬け込んで出汁の効いたポン酢を使っていましたがお昼はミツ○ンポン酢を使用していました。

もちろんそんな事をお客様に伝える訳にはいかないので「ありがとうございます」とだけ返答したのですが、なんだか騙してしまったような気持ちになりました。

その事を同じお店の先輩に相談したところこう答えられました。

お客さんが950円という金額に対して満足して帰ってくれたのであれば何も恥じる事はない。

お店の味、盛り付け、接客、店構え、器、雰囲気。その全てを含めて美味しいといってくれている。料理も950円の限られた金額でおいしいと思えるものをお店が提供して、

それがミツ◯ンのポン酢であっても自家製のポン酢のように感じてもらえるのであれば立派なお店の付加価値じゃないか。

と。

事実そのお店のランチはかなり人気がありました。

お客さんもほとんどがリピーターで毎日のように来てくださる方ばかり。

これは950円を払うという事に満足してくださっている証拠だと思って間違いがないと思います。

そこに満足するだけの対価を感じていただけなければ当然売れないし、ましてや悪質だと捉えられれば今の時代ネットの風評被害で口コミは広がりすぐにお店は廃れていったでしょう。

そのお店と店主さんには舌の肥えたお客様にさえミツ◯ンのポン酢を自家製のポン酢と思わせる実力と信用があったという事です。

ここで念を押しておきたいのですがそのお店のランチは明らかに良心的だったと従業員であった僕が自信をもって言えます。

950円に見合う以上の食材、そして味でした。

 雰囲気は本物を作り出す

濁すべきところは濁す。これは大切なことなのかもしれません。

大切なのはお客様の満足。馬鹿正直が真摯な姿勢とは限らないのだということを学びました。

この件を踏まえて学んだ事

  • 味覚は雰囲気に大きく左右される
  • お客様は料理だけじゃなく、サービスという付加価値にもお金を支払っている事
  • お客様が満足してお金を支払って帰る事ができる店であれば1万円でも950円でも良心的と呼べる事

以上、ぼりでした!