ぼりの板前時代

【料理人の給料】時給350円でも1年で70万円貯金できた板前業界の仕組み

2年前(2016年夏)に勤めていた都内の料亭を退職し、現在はフリーの料理人として独立しました、ぼりです。

ぼくは料亭や割烹料理屋、居酒屋から魚屋まで、さまざまな場所で修行してきました。

板前修行ときくと、

「キツイ」

「長時間労働」

「安月給」

という絶望的なフレーズを耳にすることがあります。

 

そしてお金に関してはコレ、まあまあ当たってます。

 

でも、単純に生きていく上ではそんなに困らないし、無駄遣いしなきゃ結構貯金もできます。そして記事タイトルはぼくの実例です。

 

安月給の板前さんがどうして1年で70万円も貯金できたのか?それについて実体験をもとに証明いたします。

板前(見習い)のお給料

これについては個人店なのか、大きめの料亭やホテルなどの「会社」かどうかでかなり変動します。なのでぼくのケースでありのままを発表していきます。

個人割烹店(関西)

  • 休日  週休1.5日(平日フル、土曜午後出勤、日曜お休み)
  • 食事  3食付
  • 実労働 約370h/月
  • 休憩  30分/1日
  • 給与  ¥130,000(現金支給)
  • 昇級  ¥10,000/1年

こんな感じです。ちなみに福利厚生などの店舗側の負担は一切なしです。

個人店同士で組合を作っていたので、「国民健康保険」だけはちょっとお安く入ることができました。

料亭(関東)

  • 休日  週休1.5日(シフト制週1休、日曜半日営業)
  • 食事  2食付
  • 実労働 約400h/月
  • 休憩  30分/1日
  • 給与  ¥130,000(振込支給)
  • 昇級  実力、ポジションに応じて変動
  • 賞与  年2回、入社時3万円

大きなお店になると「個人店」ではなく「会社」になるので 、福利厚生やボーナスなど、一般企業に近い就業体系が多くなってきます。

ちなみにぼくは一番下っ端での入社から、4年間でお刺身を切らせていただく「板場」まで昇進した上で、20万円ほど頂いており、ボーナスは1ヶ月分が最大でした。

言うまでもなく、大きい店の方がお給料が多く、雇用形態も安定していました。

残業という概念は基本的に存在しない

ここからがさらに現実となってくるところなのですが、基本的に残業代という概念はありません。

ぼくがいままで聞いてきたところで、少なくとも個人店で残業代をいただけるところは聞いたことがありません。

ただ、ホテルぐらいまで会社が大きくなると残業代がきちんと出るところもあります。

時給で換算するとえげつないことになった

正直、「修業なんだから」って理由だけで当たり前に感じていたし、周りもそんなもんだったのですが、計算してみたら時給350円前後なんですよね。

3時間働いてようやく1000円。

1日フルで14時間働いたらようやく5000円前後です。

えげつない。

それでも1年間で70万円を無理なく貯金できてしまう

こうやってみるとけっこうキツイ金額ですよね?でもヨユーで貯金できるんです。

「寮」と「まかない」があるので。

 

寮(住むところ)があって、まかない(食事)が出る。ということは正直生活にかかってくるお金って、お休みの日の食事代と携帯料金くらいです。

なので、寮にいるうちにお金のかかる包丁を買ってみたり、普段は行かないようなちょっとお高めの料理やさんに勉強がてら行く人が多いです。

生きていくことに関してだけで言えば、寮生活を耐えられる人は板前さんになれば困ることはありません。

体力的には間違いなくキツイですけど。あとお金を使う時間がない。

ぼくは寮生活を脱出する為に、13万円のお給料のうちの5万円を定期預金していました。

その上で月ごとに余ったお金もちょろっとずつ貯金してたら1年で70万円です。

でも、13万円のうちに、かかるお金が携帯代とお休みの日に遊びにいく程度の出費しかなければ8万円あれば余裕でいけますよね。

それなりに出費に制限をかければこのお給料でも100万円の貯金は可能です。

料理人を続ける上で大切な「目的意識」

飲食店は本当にお店によって全然ルールが違います。

今回ぼくが挙げた例も本当にわずかな情報なので、「とにかく俺あのお店で働きたいんだ!!」って人じゃない限りはしっかりと下調べをしたほうが無難です。

一旦職場に入ってしまうと、「自分の思っていたのとはちょっと違った〜」といって簡単に他の職場に移るのは正直難しいので。

増してや、それが人の紹介だったりするとかなり厄介です。「紹介した人の顔を潰した」とかって話になるので。

料理人の世界は「横のつながり」で形成されているので、「〇〇ってやつはすぐに辞めるやつだ」ってレッテルを貼られたりします

楽な職場はありません。それは当然。しかし、生活ができなくなるのは全く別物です。

自分はどんな料理人でありたいのか。職業として、独立を目的として、いろいろとあると思いますが、まずは自分のありたい形を理解した上で、しっかりと職場を選ぶことがなによりも重要なことだと実感しています。

これから料理の世界に入る人も、転職を考えている人にも、ぼくは必ず転職エージェントを薦めています。

お店と自分との間にしっかりとプロのキャリアアドバイザーに入ってもらい、お給料の交渉や、休日の交渉を行なってもらいましょう。

正直、これから「修行をさせてください」という立場で、お給料とお休みの交渉を自分でするのは、よっぽど心の強い人でない限り難しいので。

飲食業界に入る、修行先を移動するときに、人づてでの紹介は絶対に辞めておきましょう。

料理の世界に挑戦するのであれば、ぼくは絶対に転職エージェント(担当者が就職先との間に入ってくれるサービス)を介すことをオススメしています。
こちらが実際にFoods Laboさんという飲食専門の転職エージェントさんにお話を伺ってきた際のインタビュー記事です。
よかったらぜひ参考にしてください。

こうしてキャリアアドバイザーを挟んでお店の状況を聞く事や労働条件を調べる事が今まで本当にできなかったからこそ、これからチャレンジをする人にはせめて「修業先を選ぶ」権利を持ってほしい。

料理を好きな人が「修業」に挫折してその業界自体に失望してしまうのは本当にもったいないと思うから。

夢を持って専門職にチャレンジするのは本当に素敵な事だと思っています。

だからこそ一歩踏み出すのであれば自分の趣向に合った「働き方」を探す事からしっかりと考えてみてほしい。

以上、ぼりでした!